「なぜ先生が香水をつけて学校に来るのかお話ししますね」生徒の“勝手な噂話”の真相に全てハッキリ答えてくれた先生

オンナの叫び

私が中学生だった頃、全校生徒が体育館に集められ、ある先生のカミングアウトを聞かされた。その話を聞くまで、全校生徒のうち半分くらいの生徒が、「へっ!真面目に聞いてやるもんか」という態度で、ザワザワと好き勝手に話をして、集会が始まるまでの時間を邪魔していた。

でも、ある先生が前に立って話し始めると、おやおや?と、これは今までにない特別な話だという空気が伝わった。それもそのはず「なぜあなたが?」という、意外な先生がマイクを握って話し始めたからだ。生徒たちは一人、また一人と、その先生の主張に耳を傾けた。

先生の話の冒頭はこんな感じだった。「生徒のみんなは、不思議に思っているでしょう。どうして僕が香水をつけて学校に来るのか。僕のことを「あの先生、どうして臭いの?」って思っている人もいるでしょう。それはね、昔、僕が臭いのことで、傷ついたことがあったからなんです。」

ここまで話す頃には、先生を茶化す生徒の声は聞こえなくなっていた。

しんとした体育館で、先生は辛そうな顔で話を続けた。きっと最後まで悩んで話すことを決意したのだろう。

その先生は、見た目は普通の中年男性だった。話し方も柔らかくて、優しくて、とても穏やかな人。でもすれ違うと、その異変に気付いてしまう。先生の見た目からは想像がつかないくらい、ものすごい強烈な臭いの香水をつけていた。家庭内にあふれる“生活の匂い”じゃなく、意図して付けた“ギラギラした臭い”だった。先生がそばに寄ると、気分が悪くなってしまうくらい、強烈な香水だった。

その先生が通り過ぎたり、教室に入ってくるたび、生徒の間でひそひ声が飛び交った。「ねえ!今、臭くなかった?」「なんであんな臭いしてるの!?」先生は生徒の手本でなければならない。それなのに、なぜ香水をつけているんだろう?生徒みんな疑問に思っていたけれど、それを直接ぶつける子どもはいなかった。人は勝手な噂を楽しむくせに、案外その裏にある事情を知ろうとしない。一方で私たちも子どもながらに気を使い「これは聞いちゃいけないことなんだろう」と、勝手に判断して、先生に歩み寄ろうとしなかった。そうやって噂が噂を呼んでいった。

私たちの噂が先生の耳に届いたのだろう。そして先生を傷つけてしまった。これではいけない。言わなきゃと思っていたのだろう。それで全校生徒が集められ、先生のカミングアウトが始まった。

今まで全然知らなかったけれど、その先生は、自分の体臭をものすごく気にしていたらしい。ある時、前に勤めていた学校の生徒に「くさい」と言われたことがショックでショックで、それ以来、周囲に不快な思いをさせないよう、自分からバリアを張るように香水をつけるようになったらしい。

私はショックだった。先生の過去を知らないで、今の状態を勝手に面白がって噂していたこと。前の学校の話とはいえ、先生みたいな大人でもそこまで追い詰められてしまったということ。そこまでさせたのは、私たちみたいな年頃の生徒だってこと。先生がカミングアウトしてくれなかったら、私たちは、人の事情も知らないで勝手な噂に流される嫌な大人に育つところだった。先生には、生徒を想っての事情がある。小さな噂を大事にする前に、その裏側を想像できる人間になりたい。

“まゆ毛整えた”女子中学生「3日間の別室登校」…“行き過ぎた指導”の声

https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000261536.html

この記事を読んで、先生の指導自体は行き過ぎたものだと思った。その一方で、どうしてその先生は、そんな行動を取ったんだろう?何がその先生を、そうさせたんだろう?という疑問が湧いた。学校という場所では、いつどんなきっかけで先生が悪者にさせられるか分からない。大人から子供へ、一方的に指導をするのではなく、先生と生徒がそれぞれ言いたいことを平たい目線で話し合える世の中になればいいのに。どうしてそう思ったの?今の行動、あなたらしくないね。そう言える大人になりたいし、そう言ってくれる人が周りにいて欲しい。一歩踏み込んで真意に迫る人が増えない限り、これからも学校では色んな問題が起こり続けると思う。

書いた人 本間恵理

新潟県出身。東放学園専門学校卒業。学生時代にラジオの放送作家を経験した後、テレビの放送作家の事務所に就職。リサーチャーとして独立後、2020年7月、女性だけ...

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