妊娠してなくても産婦人科行こう!~初めてエコーを見た日~

オンナの叫び

あなたには「かかりつけ医」がいるだろうか?
もしいなければ、何かあった時、どんな基準で医者を選んでいるだろうか?

都会では「信頼度」よりも、クチコミと営業時間が基準

18歳で上京するまで、地元の小さな町には医者が一軒しかなかった。ハの字に下がった真っ白い筆先みたいな眉毛が特徴の、優しい顔のおじいちゃん先生が、町の皆の「かかりつけ医」だった。風邪をひいても、骨を折っても、肌が荒れても、何かあればとにかくそこへ行く。だから、医者を選ぶ必要がなかった。

ところが、東京で一人暮らしを始めると「かかりつけ医」という概念が消えた。主要駅近くのビルには色々な専門医が開業していて、どれを選んでいいか分からない。都会で医者を探すときの基準は、長年の信頼度よりも、3秒前にネットで見つけた他人のクチコミを優先せざるを得ない。

このシステムがあまりに便利すぎる。「今日は雨だから行くのやめとこう」とか、カメハメハ大王並みに気まぐれな理由で受診をためらうほどだ。ようやく重い腰を上げて、たまたま空いてる病院に行ったものの、また一から個人情報を記入シートに書かなくてはならない。新たにもらった病院の診療カードが溜まりすぎてデッキが組めそうだ。耳鼻科だけで3枚もあるじゃないか。

こんな基準で医者を選んでいいのだろうか?

そこで私は決意した。どこでもいいから、近所でかかりつけ医を探そうと。偶然、駅のホームで、できたばかりの病院の看板を目にした。

それは「婦人科」だった。

婦人科か…新しくてキレイそうだし、行ってみたいな。でも私、妊娠してないのに婦人科に行っていいの?実はちょっと興味があった。

その頃、ハマっていた海外ドラマ「セックスアンドザシティ」で、主人公のキャリーが友人たちと婦人科についてオープンに話していたのだ。「いい婦人科知らない?」「紹介しようか?」そんなライトなやりとりに、カルチャーショックを受けた。

婦人科って、妊娠してなくても行っていいの!?
ていうか、女性の体の専門医なら、むしろ診て欲しい!

妊娠してないけど、人生初のエコー体験することに!

翌日さっそく駆け込んで、気になっていた生理不順について相談した。有難いことに、妊娠していない私でも、すんなり婦人科で診てもらえた。それどころか、人生初のエコーまで体験させてくれた!へえ、自分の子宮ってこんな形しているんだ。ふむふむ、もし妊娠したら、ここに赤ちゃんが入るのか。

おもしろーい!すごく勉強になった。

いざ妊娠した時に行き当たりばったりで婦人科に駆けこんで緊張しながらエコーで診てもらうよりも、今こうしてリラックスした状態で体験しておくことってすごく貴重だと思った。それ以来、定期的に診察をお願いしている。かかりつけ医を決めてから感じたのは、何か起きてから医者に駆けこむのではなく、普段から予防に努めるのってとても大事なんだなということ。悪い時だけ医者に行くのって、日本人の悪い癖。「私、大丈夫ですよね?」って、健康の価値観を確かめに医者に行ってもいいんじゃないか?

ある朝、のどに異変が起きていた

ある時から、体がだるい日が続いていた。眠っても、起きていても、ずっと疲れていた。仕事でも会議と会議の間の移動すら体力が持たず、一旦家に戻って横になっていた。一度横になると、そのまま背中がベッドに張り付いたような気分で、起きたくなかったし、起き上がれなかった
でも、ケガしたわけでもない。あざもない。血が出ていない。じゃあどうやって病気を疑えばいいのか?

だから全部「自分のやる気がないせいだ」と思い込んでいた。
これがいけなかった。

ある朝、鏡を見ると異変が起きていた。のどがぽこっと腫れている。ピンポン玉くらいの大きさ。はっきりと、影が映るほど前に飛び出していた。なんだろう?
迷うことなく、私の「かかりつけ医」の婦人科へ駆け込んだ。こういう時、一から病院を探していたら、また気まぐれな理由で診療をためらっていたかもしれない。
これが、「かかりつけ」を決めておいて、よかったと思った理由だ。

さらに、話が意外な方向に展開した。甲状腺が腫れていると判明したのだ。バセドー病か橋本病の疑いがあると…

私なんかが、診てもらえるの?健康に遠慮はいらない

婦人科の先生は、すぐに甲状腺の専門病院への紹介状を書いてくれた。後日、紹介状を手に病院を訪れた。8階建ての大きな建物で、思わず、ビルを見上げて息をのんだ。

自分の健康を確かめるために婦人科に通い始めただけなのに、こんな大病院に来るなんて。予想外だし、未知の世界だった。

早く診てもらって、自分の結果を知りたかったけれど、早朝から並んでいる患者が大勢いた。隣の患者の会話に耳を澄ませると中国語のようだった。海外からもわざわざ来ているのかな。
私みたいな若い世代は、後回しにされるんじゃないだろうか?不安になってきたが、ゴールドチケット「紹介状」のおかげで、案外すぐに診てもらうことができた。ここまで相当な数のフラグを立てておいたので、ようやくたどりついたラスボスで何も病気が発覚しないのもつまらないと、腹をくくっていた。

採血で、すべてがはっきりした。結果は「橋本病」。のどぼとけのすぐ下にある「甲状腺」に炎症が起こる病気だ。この甲状腺が腫れたり、甲状腺ホルモンを作る働きが低下して、甲状腺機能低下症を起こしてしまう。男女比は約1対20くらいで女性の割合が多く、年齢は30~40歳代で起こりやすいという特徴がある。
先生の説明を受けて、落ち込むどころか、正直ほっとした。病気が分かってほっとしたというのも変な話だが、正体不明の不調に悩まされていた日々にようやく名前を付けてもらえて、晴れ晴れした気分になった。そうかそうか、私は橋本病なんだ。これからは、プロフィールに「橋本病」って書こうっと。

この社会では、大人になると「既婚」と「独身」で区別される。そして既婚の女性は普段の仕事に加え、主婦業や子育てまで並行していてすごい、と労うのが正解になっている。でも、私だって私自身の「母」だ。私自身も仕事をしながら、自分のために主婦業をし、私という大きな子どもを育てている。そして、今度はその私が病気になった。だから、私のことは私が守っていこうと決めた。「既婚」でも「独身」でも、関係なく病気になる人はなるんだから、「女性だから」「主婦だから」とカテゴリに当てはめて人を評価するんじゃなく、男女関係なく人が人を労い合うような社会になるべきだ。

あなたが仮に健康を自負していても、果たしてその健康の価値観は正しいのだろうか?それを確かめるために、かかりつけ医を決めてはどうだろう。特に若い女性、まずは婦人科に興味を持つことから始めて欲しい。オンナって言うのは、ただ立っているだけでも常に何かと闘っては、傷ついている生き物なのだから。

 

書いた人 本間恵理

新潟県出身。東放学園専門学校卒業。学生時代にラジオの放送作家を経験した後、テレビの放送作家の事務所に就職。リサーチャーとして独立後、2020年7月、女性だけ...

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