学校の性教育で「妊婦の孤独」も教えてほしかった

オンナの叫び

小学生の頃から育児金の心配をしていたゆとり世代

女性はいつから妊娠を意識するのだろう?

私の記憶では、小学生の頃女子同士でこんなうわさ話をしていた。

「子どもを産んだらお金がもらえるらしい!」おそらく平成6年に改正された「出産一時育児金」支給のニュースを見たのだろう。その話を聞いて「じゃあ私、いっぱい産もう!」と、拳を突き上げ声高らかに宣言している女子がいた。

その会話の傍観者だった私も「へえ、大人になったらいいタイミングで出産してなんとか育児金にすがろう」と浅はかに考えていた。

あれから25年以上経った。結局一度も妊娠しなかったので「育児金」を利用したことがない。そして「お金がもらえるなら安心して出産しよう」という浅はかな期待も薄れてきた。東京で働き始めて、ここは生きていくだけで金がかかる街なのだと気付いた。立っているだけ、息を吸うだけで金が消えていく街なのに、みんなどうやって子育てのお金を工面しているのだろう?現実を知るのが怖い。

「少子化対策」「女性が働きやすい世の中へ」という言葉をうっすら耳にしながら社会人生活を送ってきたが、年々社会への諦めと不安が増している。

それでも妊娠したら漠然と「うまくいく」と思い込んでいる

私は未婚で妊娠の予定もない。

そんな私でも、漠然と「妊婦したらこう過ごしたい」というイメージがある。

まず、妊娠した後の流れだ。「妊娠届を役所に出したら、定期的に案内やらなんかがポストに届いて、指定された日に指定された場所に行くと検診を受けたり妊婦の注意事項を教わったり、トントン拍子に進むんだろう」と、うっすらイメージしている。

さらに里帰りバージョンも考えている。

「コロナが落ち着いた時期なら里帰り出産もいいなぁ。働き通しだったから妊娠期間は仕事も休んで、人生2度目の夏休みにしよう。(1回目は専門学校時代)時間もできるし、新しいポケモンシリーズもプレイしようかな」と、今から妊娠中の過ごし方をウキウキ妄想している。妊娠の予定すらないのに。

とにかく根拠も証拠もないのに、妊娠したらいい方向に進むはずという漠然としたビジョンしかない自分に驚く。そして、そう考えるようになったのはきっと学校の保健の授業で「うまくいくバージョン」しか教わってないからだ。

そこで頭を切り替えて、具体的に考えてみた。

私が妊娠した時、「誰が」助けてくれるのか?

「どこ」に相談したらいいのか?

妊娠未経験の私が、出産経験者に話を伺うことにした。

Twitterを通じて知り合った@akatsuki174さん。

今年4月に第一子を出産。妊娠した当時感じていた「妊婦の孤独」についてインタビューさせてもらった。

「妊婦の孤独」を、なぜ誰も教えてくれなかった?

Q、妊娠した時、まずどんなことを知りたいと思いましたか?

これからどういう過程を経て出産に向かうんだろうということを調べるため、妊娠期間のおおまかな流れ、各期間中に起こることなどを調べました。

すると自分は「妊娠初期」という段階に当てはまることが分かり、その「妊娠初期」とはどういう状態なのか調べていくと、「流産を最もしやすい時期」と書かれていて、怖くなりました。

Q、どれくらいの確率で流産してしまうのですか?

だいたい15%くらい、6~7人に一人。(※諸説あり)

じゃあ「妊娠初期」を越えたら大丈夫なのか、と思って調べたら「安定期」という名前が出てきた。文字面的になんだか安定していそうなのに、それ以降も流産の可能性があるということを知ってビビってました。

Q、妊娠初期はどんな心境でした?

とにかく「流産」がこわかった。

安易に「妊娠した」と周りに伝えてしまって流産した場合、それも伝えなければいけないじゃないですか。そうすると、気を遣わせることになるし、こちらとしても相当辛い。だから妊娠が分かっても不安な気持ちはあまり人に共有できず、家庭内だけという感じでした。

Q、流産の可能性について病院で教えてもらいましたか?学生時代の授業では?

病院では教えてくれませんでした。

学校でも習っていないと思います。授業では「出産」が正しく進んだ場合の過程は教えてくれるけれど、それ以外の「エラーケース」は教えてくれなかった

妊婦の孤独を助けてくれるのは社会じゃない

Q、不安だった時期に、「本当はもっとこうしたかった」という理想はありましたか?

あの時、思いついていればよかったなぁと思うのが「マタアカ」。

匿名で「定期検査でこういう結果だった」「妊娠中のこういうことが不安だ」と気軽に投稿していて、しかもその不安な気持ちについて共感の意味での「いいね」がついていた。現実よりも、不安を解消しそうな世界が広がっていた。

ああいうアカウントがあることを妊娠初期に知っていればよかった。

「マタアカ」とはSNSで妊娠のことをメインにつぶやくアカウントのこと。「マタ」はマタニティを指し、出産後は「ママアカ」に切り替える人もいる。

確かにここ数年、SNSで「マタ垢」「ママ垢」と書かれたアカウントをたくさん見かけるようになった。でも未婚で妊娠予定のない私が、フォローさせてもらうのはなんだか気が引けた。見てみたい興味はあったけれど…

Q、マタアカって、マタニティ以外の人が見ていたらどう思います?

いいんじゃないですか?参考になると思います。

同じ境遇の人たちのほうが共感できて盛り上がるんだろうけど、その他の人がフォローしていてもいいはず。

Q、これから妊娠を望む人に伝えたいことは?

辛いこと、不足の事態もあるけど、SNSも活用しながらうまく不安を紛らわす方法を各々で見つけてほしいです。

これって変な世の中じゃないか?

世間では「少子化対策」とか「女性が生みやすい環境整備」とかごちゃごちゃ言ってるのに、肝心の「妊婦が知っておくべき知識」が、親になるはずの男女ともに共有されていない気がする。これって変な世の中じゃないか?

妊娠初期の流産は誰にも起こり得ること。その不安を身体に宿しながら過ごすのは女性なのに、恐怖や疑問を誰にも共有できないまま「子どもを育ててください」なんて世の中、あまりに辛くないだろうか?

妊娠に対して漠然としたイメージしかなかったけれど、これだけははっきり分かった。「妊娠初期は孤独」。見えていなかったものが見えた気がした。

そして、リアルな世界で悩みを叫べなくても、SNSの世界で気軽に仲間と繋がれるのだと知って安心した。私もいつか妊娠したら真っ先にマタアカをフォローしよう。

協力:@akatsuki174
https://twitter.com/akatsuki174

書いた人 本間恵理

新潟県出身。東放学園専門学校卒業。学生時代にラジオの放送作家を経験した後、テレビの放送作家の事務所に就職。リサーチャーとして独立後、2020年7月、女性だけ...

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