しみる!痛い!熱い!万年手荒れオンナがネイルサロンで味わった地獄

オンナの叫び

仕事で心病んだ…そうだ、ネイルサロンに行こう

ネイルといえば今まで「マニキュア」程度しか知らなかったが、ここ数年はサロンで施術してもらう「ジェルネイル」がトレンドのようだ。「ジェル」と呼ばれる液体を爪に塗り、UVライトまたはLEDライトを当てて硬化させる施術のことで、長くて2~3週間はネイルをキープすることができる。デザインが豊富で、長持ちする点が特徴だ。

今から数年前。当時の私は仕事、過労、寝不足で心のバケツが一杯一杯になっていて爆発寸前だった。目の前の景色がすべてモノクロに見えていた。視界に映るのはパソコンを打つ自分の指先のみ。だったら、せめてこの世界だけでもカラフルにしようと、ネイルをする決心をしたのだ。

心ここにあらずのまま進む会話、それがむしろ心地よかった

初めてのネイルサロンは緊張したが、初体験だと伝えると、サロンの女性は丁寧に説明しながら進めてくれた。おまけに、小一時間向かい合って雑談しながら施術をしてくれるので、仕事の話、恋愛の話、趣味の話、映画の話…色々な話ができるのですばらしい気晴らしになった。わざわざ友達と出かけてお金を払ってカフェに入らなくても、ここに来れば雑談しながらネイルもしながら非日常を味わえる。ほどよい距離感で話を聞いてくれる占い師のようだと思った。

その当時はコロナ以前だったが、店の決まりなのか施術師はマスクをしていた。口元が見えないので、笑っているのか頷いているのか分からない。その表情の見えない接客はむしろ、抜け殻の状態の私にとって気が楽だった。何気ない会話をしながらも、別に目を合わせなくていい。私も、施術師も、私のネイルが出来上がっていく様にしか興味がなかった。心ここにあらずで会話が進んでいく。あれはとても心地よかった。


ネイルの仕上がりは大満足!サロンを出て外に踏み出した瞬間、モノクロだった世界がようやくカラフルになった。可愛いネイルを見ながらパソコンを打つのが楽しかったし、仕事へのやる気スイッチも戻った。次にサロンに行くときは、どの色のネイルにしようかな?と妄想を膨らませていた。そして何より、また何気ない会話をしに行くことが楽しみだった。

事件は2週間後に起きた

それから2週間、そろそろ爪が伸びてきてネイルのデザインにも飽きてきたので、新たな施術をしてもらうために再びサロンを訪れた。ここで事件が起きた。新しいネイルを塗るためには、今塗っているネイルを取り除かなければなければならないという。そう言われればそうなのだが、何せ人生初のネイルなのでその知識さえなかった。とりあえず言われるままに指を預けた。

施術師が取り出したのは、小さく切り分けたキッチンペーパー。それを1センチ角に折り畳み、リムーバーと呼ばれる「除光液」をしみこませる。そして爪の上に乗せ、指全体を覆うようにアルミホイルを巻きつける。こうすることで、リムーバーが蒸発することなく、爪になじませることができる。

ネイルサロンの仕事道具で、意外にもキッチンアイテムが多く使われていることが面白かった。100均で売っていそうな日用品も使われていて親近感が湧いた。これなら私も自宅で揃えられるかも?なんて、気を緩めて眺めているうち、違和感に気づいた。

手が熱い。

熱い、熱い、熱い・・・

痛ーーーい!!!

しまった!やっちまった。遅ればせながら紹介します。私、万年手荒れオンナです。夏だろうが冬だろうが、いつだって手が荒れています。そして、その荒れた手だとリムーバーが沁みるのだと気づくべきだった!!なんてこったい!!
十本の指すべてにアルミホイルを巻き付けた後で大後悔。今更、外してくれなんて言えない。この施術の前に一言、自分から言えばよかった・・・でも、リムーバーをするのも人生初。こんなに沁みるなんて知らなかった。手が焼けるように熱い。指がぶるぶる震えてきた。眠っていた手の呪いを呼び起こしてしまったようだ。

呪われた手にさらなる地獄が待っていた

なんとか我慢して数分後、ようやくアルミホイルを外してもらい、痛みから解放された。ネイルはほどよく浮いて、ふやけるように地爪からはがれていた。これで一安心・・・と思ったら、さらなる地獄が待っていた。施術師の女性が取り出したのは、カニスプーンのような細長い銀色の道具。その先端で、驚くことに、爪の上に浮いている残りのネイルを削り出したのだ!

「ガリッガリッ」とおどろおどろしい音を立てて、さっきまで私の爪と一体になっていたネイルを、力を込めて削り落としていく。これがネイルサロンにおいて必要な施術なんだろうけれど、こんなに爪をいじめるの???爪と皮膚の間に食い込む食い込む。よくも私の呪われた手を、ここまで自由に操れるな・・・彼女は猛獣使いか?手荒れを知らない人って怖い。さすがの私も危険を察知して「あの、手が荒れているので、もう少し抑えてやってもらえませんか?」とお願いした。施術師は目を合わせずとも快くオーダーを引き受けてくれた。

彼女を責めるつもりはないが、「ネイリスト」って爪のことだけ見ていればいいの?施術さえできればいの?と疑問に感じてしまった。「爪」にデコレーションを施すうえで、その周りの皮膚や、指と爪の間の部分は全く目に入っていないのかなと逆に驚いた。

指が動くのは奇跡。手荒れ患者の日常を知ってほしい

朝、顔を洗う時。トイレの後、手を洗う時。食事で箸を握る時。仕事でペンを握る時。誰かと手を握る時。いつも当たり前に動いている指。

それは、私にとっては奇跡。私の指は相当もろくて、例えば電車通勤の時、バッグの中の定期を探してガサゴソした瞬間、財布の角、透明ファイル、書類の先…こんなちょっとした刺激で皮膚がゴッソリ持っていかれる。バッグから手を抜いた瞬間、ピラニアが泳ぐ水槽に手を突っ込んだのかな?と思うくらい絶望する。でもこれが手荒れ患者の日常なのだ。

傍から見たら健康そうな指でも、皮膚の色、質感、臭い、可動域…毎日違う。一日の中でも変化する。指のコンディションをこんなに気にするのは、私が手荒れ当事者だからだろうか?でも、少なくとも指先を相手に仕事する人がいるなら、「あなたの指はネイルサロンに向いてない」そうハッキリ言ってくれることこそがプロじゃないか?と残念だった。

以来、サロンでのジェルネイルはやめた。家でセルフネイルに切り替え、リムーバーを使う時は手と心をうんと回復させてから使うことにした。たかがネイル一つのために、まずは手を原状復帰する必要があるのは面倒だが、私の場合仕方ない。それが、私の世界をモノクロからカラフルに変えるツールだから。
私のように、手荒れと付き合いながらできる限りのおしゃれを望む女性は多いはずだ。
アトピーや手の疾患の専門知識を持ったネイルサロンがもっと増えたらいいのに・・・と思う今日この頃。

書いた人 本間恵理

新潟県出身。東放学園専門学校卒業。学生時代にラジオの放送作家を経験した後、テレビの放送作家の事務所に就職。リサーチャーとして独立後、2020年7月、女性だけ...

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