毒のない男はつまらない。「ワルい男」に惹かれる心理

オンナの叫び

昔から、真面目な男が好きだった。

真面目で優しくて、わたしのことを大切にしてくれる男。それがずっとわたしの理想だった。

ワルい男なんてどこが良いの?

ワルい男に惹かれてしまう、なんて女性をよく見るけれど、そんなの自分のことを大切にしていないからそうなっちゃうだけでしょ?と思う。自分のことを大切にしていれば、しょっちゅうヒヤヒヤさせられたり、振り回されたりするような男を好きになったりしない。自分のことを労って、お姫様のように扱ってくれる男を好きになるに決まっているじゃないか。

ずっとそんな考えで生きてきたから、今の夫も含め、交際した男性はみんな真面目で優しい人ばかりだった。学業にも仕事にも熱心で、家族や友達を大切にして、わたしのわがままは何でも聞いてくれる、優しい男。それがわたしの歴代の恋人であり、今の夫だ。

それを疑問に思ったことなんて1度もなかったし、むしろそれを誇りに思っていた。なんなら、わたしには男性に優しくされて、愛されてしまう才能があるのだとまで思っていた。自惚れもいいところである。

マスターの一言でハッと気づく

だけどある日、行きつけのバーのマスターと夫の話になったとき。マスターに「旦那さんってどんな人?」と訊かれたわたしは、自信満々に、ちょっと自慢したい気持ちもあって、「すごく真面目で優しい人です。生まれてこの方、道を踏み外したことなんてないんじゃないかってくらい」と答えた。

大抵の人はそれを聞いて、「へー、優しい旦那さんなんだね、幸せそう!」と称賛してくれる。だけど、マスターは違った。ちょっと眉根を寄せて、「それって退屈じゃない?」と声を潜めたのだ。

びっくりした。みんなから「優しくて真面目な旦那さん」と褒められる夫を、「退屈な男」と捉えられたことに。そして、それをとっさに否定できなかった、わたし自身に。

わたしは、心のどこかで夫のことを「退屈な男」だと思っていたのだろうか。だから、マスターに向かって「退屈なんかじゃありません」と言い返せなかったのだろうか。

だけどたしかに、と思う。ぶっちゃけ、夫以外の男にうっかりグラっときたことは何度かあった。そんなときに惹かれる男は、昔やんちゃをしていただとか、女の子をぞんざいに扱うだとか、いわゆる「ワルい男」ばかりだった。わたしは心のどこかで、夫にはない「毒」をもっている男性に惹かれていたのかもしれない。

マスターに自分でも気がついていなかったことを言い当てられてから、ふとした瞬間に夫に対して物足りなさを感じてしまうようになった。もっと毒を持って欲しい。もっと、わたしを焦らせたり、戸惑わせたりして欲しい。そんな刺激を求めるようになってしまったのだ。

もちろん、真面目で優しい夫に大切にされる毎日は幸せだ。けれども、たまには刺激が欲しいな……なんて思ってしまうのも事実で。

かといって、今更夫を「ワルい男」に作り変えることなんてできないし、そもそもそんなことを望んでいるわけではないし。

じゃあわたしはどうしたいんだ。そんなことをぐるぐる考えながら、今日もわたしは皿洗いに勤しんでくれる夫の背中をぼんやりと見つめるのだった。

書いた人 静紅

"1996年生まれ、大阪在住の文筆家。 小学生の頃から執筆活動を始め、現在はフリーライターとしても活動中。 メインテーマである「官能と恋」のみにとどまらず、...

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