噛んで、噛んで、吐き出して……摂食障害になりかけた話

オンナの叫び

もう4年くらい前のことだけれど、ガリガリになりたい、と思っていた時期があった。自分の身体についている肉が忌まわしくて、醜いもののように感じられた。華奢なアイドルの画像をネットで検索しては、自分の醜い身体と比較して涙が出た。

自分の体が大嫌いだった

自分の身体を見るたびにイライラして、「運動をしよう!」なんて前向きな気持にもなれなくて。そのかわり、イライラは食欲を増幅させた。イライラを紛らわせるために、何か食べていないと落ち着かなくなって、体重は1ヶ月で4kgも増えた。

食べなければ太らないのに、どうしてわたしは食べちゃうんだろう。自分にイライラして、また食欲が増して、食べて、太って……そんな悪循環に陥っていた。

晩ご飯をたくさん食べてもすぐにお腹が空いて、明日の朝は何を食べようか、なんて考えてしまう。けっきょく朝まで我慢できなくて、夜中にストックしてあるチョコレートやおかきをつまんで。今思えば、そのときの食欲は異常だった。常に何か食べていないと生きていけない、と本気で思っていた。

食べたい、でも太りたくない。どうすれば、どうすれば……、

精神的に追い詰められたわたしは、あるアイデアを思いつく。もしかしたら、食べたいのはお腹が空いているからじゃなくて、ただ口が寂しいからなのかもしれない。食べ物を噛んで、そのまま飲み込まずに吐き出しちゃえば、カロリーはゼロじゃん……。

胃の中に入れなければ平気、そう思っていた。

それからわたしは、家族に隠れてコソコソとお菓子を口に運んでは吐き出すということを繰り返すようになった。満腹感なんて得られないけれど、大好きなお菓子を味わえればそれでよかった。

だけど、それも長くは続かなくて。ある日、母がでかける間際「いちご大福があるから、おやつに食べてね」と冷蔵庫を指差した。いちご大福。大好きなお菓子のひとつだ。母がでかけてしまうと、わたしはいそいそと冷蔵庫からいちご大福を取り出して、齧って、噛んで噛んで、吐き出した。

そのとき、不意に涙がこぼれた。せっかく母が用意してくれたいちご大福。それをわたしは、こんなふうに噛んでぐちゃぐちゃにして、捨てている。わたし、何をやってるの……。

涙が溢れて溢れて、わたしは泣きながら、今度はいちご大福を飲み込んだ。

こんな罪悪感に苦しめられるくらいなら、太ったって構わない。そう思ってしまうと気が楽になったのか、徐々に異常な食欲は抑えられていった。そして冷静になって、あれは摂食障害一歩手前だったよな、とゾッとした。

あれから4年経って、わたしは今、自分の身体を愛している。被写体としてヌードを撮られるようになってから、女性らしい華奢さと柔らかさを兼ね備えた自分の身体が好きになった。もちろん、もっとお腹がぺたんこだったらいいなとか、脚が細かったらいいなとか、気になるところはいくつもある。だけど、それも含めてわたしの身体はわたしだけのものだから。そう思うと愛おしい。

わたしの場合は、自分の身体を愛せるようになったのはヌードを写真に残すようになってからだ。きっと誰にだって、自分の身体を愛せるようになるきっかけはあるんじゃないかと思う。まずは自分の身体を見つめて、向き合って、どこか「愛おしいポイント」と見つけることから始めてみてほしい。わたしが自分のくびれた腰や、大きなお尻を愛おしいと思ったように。

あなたの身体は、あなただけのもの。それを忘れないでいてほしい。

書いた人 静紅

"1996年生まれ、大阪在住の文筆家。 小学生の頃から執筆活動を始め、現在はフリーライターとしても活動中。 メインテーマである「官能と恋」のみにとどまらず、...

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