みんながわたしを監視している……これって被害妄想?

オンナの叫び

「その現象」は、ある日突然始まった。
アルバイトの帰り道に駅までの道を歩いていると、ふと「すれ違う人たちみんながわたしを監視している」という錯覚に襲われた。そんなはずないのに、みんながわたしを咎めるような目つきで見ているように感じたのだ。

付き纏う嫌な感覚

わたしは怖くなって、人の顔を見ずに済むように俯きながら歩いた。駅について、電車に乗ったけれど、そこでも「みんながわたしを監視している」という感覚はなくならない。
スマホでもいじって気を紛らわせよう。そう思ってスマートフォンでTwitterを開くと、今度はタイムラインに並ぶ写真やアイコンが怖くなった。写真に写っているひと、アイコンの顔写真、それらもみんなわたしを監視している。どうしようもなくて、わたしはギュッと目を閉じて、とにかく人の顔を見ないようにした。

それからというもの、その現象は頻繁に起こる。道を歩いているとき、電車に乗っているとき、みんながわたしを監視している、咎めるような目つきで見ていると感じる。人の顔だけでなく、ときには道路標識や車のヘッドライトまでもがこっちを見ている、と錯覚することもある。

この現象は何なんだろう。見知らぬ人たちが、ましてやモノがわたしを監視しているなんてありえない。わかっているのに、怖くてたまらない。

その理由は…?

ネットで調べてみると、「統合失調症による幻覚、被害妄想」というようなことが出てきた。たしかに、通っている心療内科で統合失調症の薬を処方されていた時期はある。だけど、薬を飲んだからってその現象がおさまることはなかった。

何より、原因がわかったからって何になるだろう。
「みんながわたしを監視している」と感じるそのとき、不安で怖くて、動悸はするし呼吸も苦しくなる。みんながわたしの敵だと錯覚する。窓ガラスに映る自分の顔すら怖くて、わたし自身もわたしの敵だ、と思ってしまう。

その現象は、たいていアルバイトの帰り道とか、趣味でやっているポートレート撮影の帰り道なんかに起こる。要は、頭を使ったり体を動かしたりしたあと、疲れているときだ。頭の中はぼんやりとしているのに、「みんながこっちを見ている」ということだけをはっきりと感じる。家につくまで、なるべく地面だけを見て歩きながらやり過ごすしかない。

これは被害妄想なんだ、と思うと、なんだか自分のことが情けなくなる。どうして自分で自分を追い詰めるような思考をしてしまうんだろう。道ですれ違う人たちも家族も友人も、誰もわたしのことを追い詰めようとなんてしていないとわかっているのに。

今はまだ「これは被害妄想なんだ」とわかっているけれど、いつかそれすらもわからなくなったらどうしよう、ブレーキが効かなくなったらどうしようという不安もある。そうしたら、家族や友人を責めてしまうことだってあるだろう、どうしてわたしを追い詰めるの、と。道ですれ違う人たちに食って掛かってしまう可能性だってゼロじゃない。過度な被害妄想にはそうさせるだけの力だってあるはずだ。

「みんながわたしを監視している」という被害妄想のせいで、周りの人たちを傷つけるようなことだけはしたくない。

かといって、対処法もわからない。
そんな不安を、わたしは今日もやり過ごすしかないのだ。

静紅

"1996年生まれ、大阪在住の文筆家。 小学生の頃から執筆活動を始め、現在はフリーライターとしても活動中。 メインテーマである「官能と恋」のみにとどまらず、...

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