「こういうの持ってるの、どう思う?」 幼馴染が「BL本」をカミングアウトした真意

オンナの叫び

巷ではよく「女は共感の生き物」と言うが、私の見解は少し違う。

「共感」ではなく「同調の生き物」なんじゃないかと思う。

あなたは、共感と同調の違い、分かりますか?

 

どうして私に言ったのか?幼馴染のカミングアウト

私には、物心ついた時から毎日のように遊ぶ女の子の幼馴染がいた。

あれは私が中1か中2の頃。彼女の家で遊んでいた時の話だ。

突然「これ見てくれない?」と本を差し出された。

 

コピー用紙を半分に折りたたんでホチキスで閉じただけの、簡素な薄い冊子。

表紙には、人気アニメの男の子のキャラクター同士が向かい合って描かれていた。私はその本を手に取り、黙々と読み進めた。

 

そこには、アニメには登場しないオリジナルストーリーが描かれていた。

最後は男の子同士で一線を越えてしまうお話だった。

私が本を最後まで読み終えると、彼女から

「こういうの、私が持ってるのどう思う?」と聞かれた。

彼女が「BL本」という言葉を口にしなかったことは、はっきり覚えている。

 

続けて「こういうの持ってても、変だと思わない?」と聞かれた。

私は率直に「思わないよ」と答えた。それは本心だった。

実は私も読んだことがある。だから免疫ができていた。

でも、なんだか空気が気まずくなって、その後のやりとりは覚えていない。

 

こういう本を持っていたこと自体は驚かないが、わざわざ見せてきた真意が分からなかった。だって、自分のプライベートな趣味をカミングアウトしたようなものだ。こういうことは自分の中にしまっておけばいいのに、とさえ思った。

 

「腐女子仲間」からBL定期便が届くように

幼馴染のカミングアウトから数年後。

高校生になった私は、あるきっかけでBL本を大量に読むことになった。

それは、同じ学年の腐女子仲間。「私もBL本を読んだことがある」と伝えると「じゃあ語ろう!!」と一瞬で気に入られ、数日後には「これ、例のブツ」と、まるで危ないクスリでも運んできたように、厳重に包装されたBL本が手に入った。その場で見ようとすると「今見ちゃダメ!」と全力で止められた。

彼女からは「こういう話、語れる人いないんだよ!!あとで感想聞かせて!」と、一方的に熱い想いを聞かされた。

語る!?語るってなんだ?

 

こうして毎日のように、学校でブツを受け取り、読みたい気持ちを我慢して一日過ごした。誰にも見つからず家に持ち帰り、お風呂に入って、身を清めた後、いよいよ御開帳。まるで男子のエロ本だ。

何度か読んだことがあるだけなのに、私なんぞが「語る」相手に選ばれていいのだろうか? 役不足な気もしていたが、せっかく借りたので隅々まで目を通した。

「BL」という特殊な世界は、私にとっては「赤毛のアン」と同じだった。

どちらも「発想の勝利」という言葉が当てはまる。孤児院で育ったアンが、代わり映えしない平凡な日常を「想像」というフィルターを通してカラフルに変えたように、私も「腐」というフィルターを通して世の中を見るだけで、こんなにも世界が面白くなるのだと初めて知った。こうしてどっぷり沼に浸かった。私の青春にときめきをくれたのは、紛れもなくBLだ。

私の好きなジャンルは、ライトなBL。「エロ」は無くていい。もし描かれていたら、飛ばして読んでいたくらい。オチがなくても、男の子同士の何気ないやりとりを切り取った、気軽に読めるお話が好きだった。

でも、貸してくれる相手にそこまで細かい設定まで指定できない。よって、ピンからキリまでいろいろなジャンルが定期便で届き、中には「読まなきゃよかった」と後悔するような内容もあった。それでも、貸してくれた相手に感想を伝えなければならない。一度返却したら、再び目を通すことはできないので、とっさに「語れる」ように、どこが面白かったか、次はどんな本が読みたいか、メモを残しておいた。相手の要望通り「語り合う」役目を果たせたのか分からないが、このやりとりは1年近く続いたと思う。

私にカミングアウトした真意は何だったのか

よく「女は共感の生き物」と聞くけれど、私は「女は同調の生き物」なんじゃないかと思う。

同調は、言動を他の人に合わせること。

共感は、他人が抱いている感情を理解し共有すること。

私は必死に「同調しなければ」と、自分を曲げてでも相手に合わせていた。

なんだか、無理に「女子」を演じていたような気がする。

高校を卒業して、地元を離れ、ようやく自分の好きな形で「BL」を楽しむことができた。せいせいした。同調したって、それは一瞬の団結に過ぎないのだ。

私にBL本をカミングアウトしてきた幼馴染の彼女は、「これ面白いよ」と押し付けるんじゃなく「これどう思う?」と尋ねてきた。彼女の真意はいまだに分からないが、単純な同調じゃなく、自分を心から理解して「語れる」仲間が欲しかったのかもしれない。

 

書いた人 本間恵理

新潟県出身。東放学園専門学校卒業。学生時代にラジオの放送作家を経験した後、テレビの放送作家の事務所に就職。リサーチャーとして独立後、2020年7月、女性だけ...

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