眼科受診しただけなのに、脳に異常!?孤独と不安を救ってくれた女医さんの言葉

オンナの叫び

私にとって、視力低下は罪だった

あなたにとって、人生で最も「親に迷惑をかけた」記憶といえば?
学校でトラブルを起こした時? 大人になってお金に困った時?

私は小学生の時、生まれて初めて胸をえぐられるような罪悪感を覚えた。
あれは、視力が急激に下がり、眼科に通わなければならなくなった時だ。

とにかく遠かった!学校が休みの土日、県をまたいで車で2時間かけて医者に通った。
親は仕事を休んで私を連れて行ってくれた。

高校に上がってからは眼鏡をかけることになり、お金がどんどん飛んでいった!
受診代、眼鏡代で、親の財布から数万円があっという間に消えた。

母からは、抑えようのない怒りがだだ漏れていた。

何度も大声で怒鳴られた。

でも、私に言い訳なんてできなかった。
こうなったのは全部自分のせいだから。

就寝後、親に隠れて寝たふりをしながら暗闇で漫画を読んだ。
いとこが置いて行ったゲームにハマって、時間を忘れて遊んだ。

どれもこれも、私利私欲が原因。

せめて痛みを感じればやめたかもしれないのに、視力が落ちても痛くもかゆくもないのだ。

目の異常、これってもしかして飛蚊症?

実家を離れる時も、父から告げられた言葉はたった一つ「目には気を付けろ」
実は父は緑内障を患っていて、足元が見えないほど視野が欠けている。
私も、その血を受け継いでいて、もともと目が弱い体質なのかもしれない。

そのうえ、私は自ら選んでパソコンに毎日触れる仕事に就いた。
目が疲れやすく、夜ふかしをした翌日は目が腫れてコンタクトが入りづらいほど。

定期的に眼科を受診して、人一倍、目には気を付けているつもりだった。

その私が、目に異常を感じたのはコロナ禍の自粛期間だった。

目の前にホコリみたいなものがうようよ飛んでいた。
手で払っても、息をふうっと吹きかけても、消えない。
メガネが曇っている?レンズを拭いても変化なし。

これもしかして飛蚊症?

かかりつけの眼科は近くにあるものの、今行くべきなのか迷った。

当時はコロナの症例も少なく、外に出るだけでも危険なんじゃないか、と思い込んでいた。
眼科にも不特定多数の人が出入りしている。

マスクをしていても人混みには行かないほうがいいんじゃないか?

交通機関、公共トイレ。眼科で荷物を預けるロッカー。お会計でお金を渡される瞬間。

予想できる感染経路は数えきれない。

あまりにも情報が少なくて、どうすべきなのか分からなかった。

それでも、父の言葉が頭をよぎった。

「目には気を付けろ」

父もきっと目の異常を放置したまま過ごしたのだ。
今は、家族の介助なしでは生きられないほど、緑内障の症状が進んでいる。

勇気を出して今行かなければ一生困る、と思った。

眼科を受診したら、なぜか脳まで調べられることに

眼科の診察の結果、私の嫌な予感が的中した。

視野の一部が著しく欠けていて、特に視力の低い左が心配だと言われた。
将来失明する可能性がある、と。

なんだか、時が止まったような気がした。

気持ちがふわふわしたまま、話が進んでいった。

まず、この異常の原因を調べることになった。
目そのものなのか、脳の異常か。

そのどちらかを調べるために、紹介状を書いてもらってなんとMRIを受けることになった。

MRIって、あのMRI?
よく医療ドラマで、脳の異常を確かめるために入れられる装置?
あのMRIに私が入るの?そんなに大事なの!?
ようやく、事態が呑み込めてきた。

コロナ禍で迎える、脳の検査。

もしも異常があったらどうしよう。
いや、見つかったほうが安心ではあるが…
仕事ができなくなったらどうしよう。
田舎に帰ることになったらどうしよう。

たくさんの不安が浮かんだ。

一応、近くに住む兄に電話を入れて、説明しておこうと思った。
兄は話を静かに聞いてくれて、取り乱すようなことはしなかった。
電話を切った後、モヤモヤした気分になった。
変な話だけど、私はどこかで「一緒に行こうか?」と言ってくれることを期待していた。

さみしくて、心細かった。

とにかく、検査の日を一人で迎えるしかなかった。
もう一度言っておく。あれはさみしくて、心細かった。

装置の中にはレクイエムが流れていた

いよいよMRI検査の日がやってきた。

荷物を預けるロッカーも、待合室の椅子すらも、どれが感染経路でもおかしくなかった。
MRIの装置に入る時は、マスクを外さなければならず、ああもう終わった、と腹をくくった。

装置に入って寝そべると、気が遠くなっていった。

扉を閉じられる間際、スタッフから素早く説明を受けた気がした。
「ものすごい大きな音が鳴るけど、機械のせいだからね。このヘッドホンをしていてください」と、両耳をすっぽり覆うヘッドホンを渡された。

何このダサいヘッドホン?するべきなの?しなきゃいけないの?どっち?
大きな音って言ってた?これから何が始まるの?とめちゃくちゃ不安になった。
ヘッドホンを装着すると、遠くでかすかにクラシックが流れていた。
え?何これ?レクイエム?J-WAVEとか、元気が出る音楽流してよ!

最初の心配はどこへやら、ビビりすぎて数分後には眠ってしまった。
でも時々意識が戻った時や、曲が転調する瞬間、空白が流れた。
その時、聞こえてしまった。

あれは、まるで地獄の音だよ。

骨と骨を叩き合わせて鳴らしたら、あんな音が出るんじゃないかな。
もしくは線路の置き石というか、工事現場の足場が崩れたような轟音。
聞くんじゃなかった。ずっと眠っていればよかった。

私に新たなプロフィールが加わった

一週間ほどでMRIの結果が出た。脳に異常はなく、一安心。
そして、ようやく病名がはっきりした。

私は緑内障予備軍になった。

すっきりした。たった今、私に新たなプロフィールが追加された。

この日、私に診断結果を伝えてくれた女医さんは、私の行動を労ってくれた。
「若いのに、よく気づいたね。飛蚊症の症状が出ても、放置しちゃう人がほとんどなんだよ」この言葉に救われた。

そうだ、一人でよくやった。

目が悪いのも、悪化させたのも自分のせいだ。
だからこそ、責任を持って勇気を出して、将来の自分を救った。
これで正解だったと言い聞かせた。

今回の出来事で学んだことは、日ごろ連絡を取らない知り合いでも、何か異変を感じたら声をかけようということ。
ウザがられても、無視されても仕方ない。私がそうしたいと思ってする行動だから。

「いつもと違って、どうしたの?」と、相手の変化を口に出すことで、
気にかけているよ、というサインを送ることが大切じゃないだろうか?
お節介を押し付けることはせず、相手の気持ちをなぞってみる。

そんな女医さんの言葉に、私も救われた。

本間恵理

元宇宙人社員 人とのズレを楽しむライター 新潟県出身。東放学園専門学校卒業。学生時代にラジオの放送作家を経験した後、テレビの放送作家の事務所に就職。リサーチ...

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