女は勘繰り、男は勘違いする職場。気持ちよく仕事がしたいから、スルースキルを発動した

オンナの叫び

腹を立てる? 誉められたと受け取る?

「アンタは、世界鈍感選手権があったらぶっちぎり1位だね」

当時勤めていた職場の先輩が、新入社員に放った一言だ。
何を言っても動じない、折れない新入社員を前に、どう扱うのが正しいのか、先輩たちは頭を抱えていた。

ちなみに、その新入社員とは、私のこと。
さて、冒頭の言葉をあなたはどう受け止めるだろうか?

「鈍感」と言われれば、カチンとくる人が大半だろう。
一般的な感覚としては、モチロン正しい。でも、考えてみて欲しい。
人生90年と考えたら、今まさに腹を立てたという、その怒りの歴史
必要ですか?答えはNOでしょ。

私は、イライラしている自分の姿が嫌い。怒りや自虐は表に出す必要がない。
10年後もこの業界でやっていくとしたら、こんな言葉にいちいちイライラすることはない。受け流しちゃえばいい。
だから、スルースキルを身に着けることにした。

なぜ、「スルースキル」が必要なのか?

現に、この言葉を受けた当時の私は、誉め言葉だと感じた。
これは、私が思うスルースキルの第一歩。
脳内で一瞬にして、自分の都合のいい解釈に変換するのだ。

「1位」という揺るぎない称号。そして「鈍感」という、この業界では最も重要な要素。「これからも、この世界でやっていく気があるの?」という覚悟を試された気がした。その言葉をもらえるポストだと、認められたも同然なのだ。

この業界、というのは私が働くテレビ業界のこと。
ここは、己の感情よりもその場の空気が優先される特殊な世界だ。
ここで働く以上、AI機能搭載の空気清浄機みたいに、常に周りの空気を察してクリーンにしておかなければならない。

スルースキル発動のサイン「オッサン」

「テレビ業界って、セクハラとかあるんでしょ?」と、よく聞かれる。
もちろんありますとも。息をするようにセクハラしてくるオッサンはゴロゴロいる。
彼らは3秒に一回セクハラしなければ死んでしまう天然記念物なのだ。

リアルなオッサンなら、見た目にそれはもうオッサンなので何てことはない。
厄介なのは、見た目が女性で中身がオッサンというパターン。
つまり、女性も同性に対して知らず知らずのうちにもセクハラしているのだ。
テレビ業界は、ちょっとでも道を踏み外すと女からは勘繰られ、男からは勘違いされる。

女も厄介という実例を挙げておこう。
「今日、なんかおしゃれだね。何かあったの?」
「今日可愛いね、彼氏できたの?」
これは「オッサン」の言葉ではなく、紛れもなく女性たちの言葉だ。
今時、こんなストレートな質問をしてくるスットコドッコイがいるだろうか。
はっきり言うと、私が今日おしゃれしようが、明日ダサい服を着ようが、今日恋をしようが、明日失恋しようが、どうでもいい。

仕事に支障は一切ない!

でもここで、真っ向から否定すればその場の空気が悪くなる。
だから、スルースキルを身に着けざるを得なかった。

天然のスルースキルを持つ女子たち

私が心から尊敬するのは「女の自分」を1ミリも崩さない女子たち。
髪をくるんと巻いて、メイクもばっちり決めて、ネイルも抜かりない。

そして、何よりも「香り」。

香水を付けて職場に来るって、すごいスルースキルが試される。
だって、勘ぐる女と勘違いする男がうじゃうじゃいるジャングルで、あえて茨の道を突き進もうとしているのだから。

中でも、この人はすごいなぁと関心したのが、年上の男性ディレクターとこっそり付き合っていたADの子。
どんなに隠しても、同棲していたことが丸わかり。

なぜなら、彼氏のディレクターの香水の匂いが、彼女にも移っていたから。

本人たちは、一緒にいる時間が長すぎて、香りが移ったことまでは知らなかったはず。
隠れて付き合っていても、周りのスタッフはとっくに気づいていた。

それでも、このADの子は揺るがなかった。
すべてをスルーしていた。
それよりも、守りたいものがあったんだと思う。

スルースキル検定があったら、この子は1級でしょう。
私はまだまだ、3級くらいかな。

男とか女とか、勘繰りとか勘違いとか全部とっぱらって、どんな自分でも受け入れてもらえる社会にならなければ、
本当の特技を発揮できる場が失われてしまう。誰かに遠慮して仕事ができなくなっては、本末転倒だ。
私もスルースキルを高めて、自分の香りをまとって仕事ができるくらい、図太くなりたい。

書いた人 本間恵理

新潟県出身。東放学園専門学校卒業。学生時代にラジオの放送作家を経験した後、テレビの放送作家の事務所に就職。リサーチャーとして独立後、2020年7月、女性だけ...

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