学校で「逃げ場所」を作ったら気持ちが楽になった話

オンナの叫び

友達がいなかったわけでもいじめられていたわけでもないけれど、なんとなく周りから浮きがちな学生時代を過ごしたことは否定できない。
すくすくと育っていった疎外感から自分を守るために、

私は「保健室」という逃げ場所を作った。

 

「保健室」に救われる。

「保健室」と聞いて、いいイメージを持つ人はそんなにいないだろう。
多くの学生にとって、保健室は病気や怪我をした時に行く場所であったり、健康診断のために行く場所であったりと、普通の学生生活ではあまり縁のない場所だ。

 

私も昔は例にもれず、保健室にはなんとなく近寄り難い印象を持っていた。
できるだけ行きたくない場所。

 

その印象がガラリと変わったのが、受験期真っ最中の中学3年生の冬。

 

自分のレベルよりも高い学校を志望していた私は、自分では一生懸命勉強していたつもりだったがどうしても不安が拭えず、
気がつくと私はぐっすり眠れなくなっていた。
そんな日が続けば体調を崩すのは時間の問題だった。

 

確か、大掃除の日だったと思う。
ついに、当時仲の良かったクラスメイトに「あまりにも顔色が悪すぎる!」と保健室に連行された。

 

保健室の先生に具合が悪いことを伝えると「最近寝れてる?」と聞かれた。
家でも学校でも塾でも成績のことばかり言われて精神的に参っていた私にとって、自分のことを心配してくれているその言葉は嬉しくて。

思わず泣いてしまった。

 

この一件を機に保健室の先生に気を許した私は、週に1度ほど相談に行くようになった。

 

「保健室」に救いを求める。

それから程なく、私は無事に志望校に合格し高校生になった。

 

高校ではちゃんと頑張るぞ、なんて意気込んでいたが、その思いはすぐに消えた。入学からたったの3ヶ月で、私は挫折した。

 

望んで入学したはずなのに、理想と現実のギャップは思いのほか大きくて、どうにもこうにもやってられなくなっちゃって。
何をしていてもなんとなく楽しくなくてしんどくて。

希死念慮をうっすらと抱えながら、鬱屈した毎日を過ごしていた。

 

そんなある日。健康診断で保健室に行く機会があった。
それまでも他の健康診断で保健室に入ったことはあったが、

その時ふと、試してみよう、と思った。

もし合わなかったらその時はその時でまた考えてみよう、でもとりあえずこの燻った気持ちを吐き出す場所として保健室を使ってみよう。

 

その日の放課後、私は部活のLINEに躊躇いつつも欠席連絡を入れ、保健室に向かった。

 

“なんかしんどくて。どうすればいいかわからなくて。話を聞いてもらえませんか。”

 

言葉は次々と出てくるけど、それを論理立てて話すほどの余裕はなかった。支離滅裂に思いつくままに、とめどなく流れていく言葉たちを、全部拾ってくれた。
溜まっていたもやもやが、一気に爆発した感じ。
ちょうどいい距離感だから、家族にも友達にも言えないようなことも吐き出した。
保健室に来ている時点で弱っているんだから、いつも思っているように自分をよく見せようとするのは諦めた。

 

「保健室」に依存する。

一度弱いところを受け入れてもらえたら再び甘えたくなってしまって。
私は保健室という逃げ場所に肉体的にも精神的にも依存した。
気にしいなのに短気だからストレスをすぐに溜めてしまうタイプの私が何も考えずに自由に過ごせる場所は貴重だったから、私は保健室に通い詰めるようになった。

やらなければいけないことがある日以外の昼休みと、部活が休みの水曜日の放課後。
他にも時間があれば、私はしがらみから逃げるように保健室に入り浸った。

 

別に毎日毎日相談事をしていたわけではない。次の授業が小テストの時はそれに向けて勉強したり、お昼寝させてもらったり、ジュースやお菓子をいただいたり、授業ではほとんど関わりのなかった先生と話したり。

 

保健室の先生から「娘」と呼ばれるほど、私の保健室へのべったり具合は群を抜いていた。

 

「逃げ場所」はすなわち安心感だ。

保健室は、私の心を守ってくれた。

 

もちろん、依存しているという自覚はあった。このままじゃまずいとわかっていた。それでも、私は保健室から離れられなかった。日常で何か嫌なことがあっても、保健室で話せるネタができた!と以前よりもプラスに考えられるようになった。ストレスを発散できる場所があるのとないのでは全く違った。クラスでも基本一匹狼だったけど、私には保健室があるから独りじゃないって思えて、無理に人間関係を頑張ろうとすることをやめられた。

 

保健室が与えてくれた安心感のおかげで、私は高校生活を大体平穏無事に乗り越えられた。しんどくなったら逃げる。そうしたら気持ちが楽になる。そのことを知ってしまった私は、結局高校を卒業した今でも保健室の先生と連絡を取り続けている。この人たちは私を否定しない、この人たちは私を守ってくれる。そういう大人と出会えたのは私の人生で一、二を争うほどの幸運だった。

 

そして、もし誰かが私を逃げ場所にしようとしてくれているのなら、あの保健室の先生のように、その人を否定しないで守ってあげたい、なんて。

書いた人 日下寿乃

神奈川県の湘南出身、2001年生まれの現役女子大生。都内の女子大で総合政策を学び、メディア業界に就職するためにさまざまなスキルを身につけるべく、ライター活動...

プロフィール

ピックアップ記事

関連記事一覧