「この子。彼の子かどうか、わかんない」挙式当日に放った花嫁の爆弾発言

ヤミ・沼

今日も新郎新婦にとっては、生涯に一度の大事な一日。

私にとっては、いつもの景色であり、非日常でもある一日。

毎日違う舞台を見られる?参加できる?のがこのウエディングの仕事の面白いところでもあり、ミスの許されないとても緊張の伴うところでもある。

約300件この仕事に携わってきた経験から、選ぶ式場により新郎新婦の、結婚式というものに対する共通した傾向や考え方があるように思う。

それは、私自身が仕事に入るときの心構えのポイントにもなる。

人生最高と言われる一日

結婚式にはそれぞれのバックグラウンドがある。

障害があり、ようやくこの日にたどりつけたふたり。

思わぬことで、急遽この日を迎えるふたり。

計画を立ててこだわりや夢を膨らませて、この日を夢見ているふたり。

二人の想い、両親の気持ち、友人、来賓の想い。

友人、知人の結婚式に出席された方は、ほとんどの人が「いい結婚式だったね」

そんな、ほんわかした気持ちでその日を終えるのでは?

もちろん主役として結婚式を挙げた多くの当人たちも。

でも、その裏で信じられないようなストーリーがあることは知られていない。

夢である幸せを演出するために

「おめでとうございます!今日はよろしくお願いいたします!」

「お天気良くて、よかったですね」

「ホント!よかったです~」

「デザートビュッフェ、私も食べていいんですか?」

挙式当日、雨が降らないでくれたら、それだけで、結婚式の裏方スタッフは一安心する。

なぜなら。。。。

その日の私の仕事現場の式場は、当時大人気のゲストハウス型の結婚式場だったから。

それは披露宴会場がヨーロッパの、とある国のイメージで建てられた洋館となっていた。

そこにはグリーンの芝生が広がる、花々に彩られた広いガーデンがついている。

絵に描いたようなガラスのカフェテーブルと、白いチェア。

そしてパラソルのセットが配置されている、女子が好きなものだらけ。

このガーデンでウエルカムドリンクとピンチョスのサービスから、パーティーはスタートする。

テーマを持った、二人のこだわりの装飾で仕上げられた会場。

二人が厳選したBGMの中でのお料理が終わると、ガーデンに面したカーテンが一斉にオープンになる。

そこに陳列された、色とりどりのデザートと、南国フルーツの数々。

そして複数のパティシエが並んで、ゲストを出迎える。

この、「ザ・幸せ」シーンを絶対にゼッ~タイに、演出したいのだ。

だから、ヘアメイク兼アテンドという、一日中新郎新婦にべたつきの業務担当の私としては、二人には、いや特に新婦にはご機嫌でいてほしいのである。

それがこの大事な一日が円滑に回る、そして無事に終わる、第一の条件とでもいえる。

この日担当させていただいた、新婦も強くそれを望んでいた。

「体調は大丈夫ですか?少しでも、異変があったらお申しつけ下さいね」

新婦には、間もなく産まれる命がお腹に宿っていたのである。

結婚式の日というのは、想像以上に新郎新婦にとっても体力を使う一日である。

お腹が大きくなっている妊婦にとっては尚更のこと。

私は新婦の動きと、顔色を重視しながら、担当プランナーや会場のキャプテンと連携しつつ一日をアテンドしていた。

ガーデンでのデザートタイムには、片手にインスタ映えするデザートを、お皿いっぱいに盛ったお友達が、新婦の周りに集まっている。

大きくなったお腹を触りながら、「もうすぐだね~」「どっち?男の子?女の子?」などの会話が飛びかっている。

始終ニコニコと微笑み、時には声を上げてケラケラと笑う楽しそうな新婦。

(ホッとしながら、あ~今日も無事にミッション終了だな~)

体調も安定していて、幸せ一杯の披露宴がお開きとなった。

控室に戻り、ドレスを脱いだあとの新婦は、身体が解放されて、リラックスした様子だった。

新郎は、別室での着替えにスタッフが案内していた。

鏡の前に座った新婦の髪をほぐしだした私は、「次は出産に向けて全力投球ですね」

「楽しみですね」と、誰もが言うであろう、そして盛り上がるであろう、会話の糸口を切った。。。

つもりだった。。。

女優になるしかない!

好きな人と結婚して、夢だった想いのたくさん詰まった結婚式を無事に終え、次は生まれてくる我が子に合う日を楽しみに待つ。

そんな幸せの中の、出産に向けての話を始めた私に。。。

「でも、この子。彼の子かどうか、わかんない」

ん?

なんて言った、今!

「他の人とも付き合ってたから。外国人とかも」

ん????

えっ???

マジかーーー。

そんな秘密の暴露されてもーーーー

不安がる様子や、困ってる様子が、あまり感じられなかったのは、私の思考が停止していたからだろうか?

「大丈夫!元気なお子さんを生んで下さい」

動揺を隠すためにでた、唯一のセリフだった。

どんな顔して、なんて返したらいいのか。。。

どんな言葉が欲しくて、こんな重大なことを私にいったのか?

この仕事をしていると時々、女優にならなくてはならないシーンに出くわす。

何が「大丈夫」なのか?自分で言いながらも、アメリカ系?アフリカ系?もしや中東系?アジア系なら大丈夫かも?とか。。。

もし、もし、万一のことがあったとき。

肌の色が違ったり、髪の色が違ったり?

その新生児を取り上げた助産師さんも、私のように、いや、私以上に女優にならなくてはいけないであろう。

そんな日が、来ないことを祈るしかない。

末永くお幸せに。

一二三輝恵

35年以上にわたり美容業界に携わり、その内25年以上をブライダル業界で働く。 元々脚本家を目指していたこともあり、ブライダル業界にて 新郎新婦からのヒアリン...

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